ミノキシジルと他の薬との飲み合わせを語る上で、最も重要かつ危険性が高いのが「降圧剤(血圧を下げる薬)」との併用です。この組み合わせは、命に関わる深刻な事態を引き起こしかねないため、絶対に自己判断で行ってはなりません。その理由を理解するためには、ミノキシジルという薬の出自を知る必要があります。ミノキシジルは、もともと重度の高血圧症患者のために開発された、強力な血管拡張作用を持つ「降圧剤」でした。その副作用として多毛が見られたことから、後に薄毛治療薬として転用されたという経緯があります。つまり、ミノキシジルを服用するということは、程度の差こそあれ、血圧を下げる薬を飲むことと同義なのです。ここに、高血圧治療のために処方された別の降圧剤を併用すると、どうなるでしょうか。それは、アクセルとブレーキで言えば、二重にブレーキを踏み込むようなものです。それぞれの薬が持つ血管拡張作用や降圧作用が相乗的に、あるいは相加的に働き、血圧が必要以上に下がりすぎてしまう「過度な低血圧」を招く危険性が非常に高くなります。過度な低血圧は、体に様々な危険な症状を引き起こします。立っていられないほどの強いめまいやふらつき、気が遠くなる感じ、そして最悪の場合は失神して転倒し、頭を打つなどの二次的な事故に繋がることもあります。また、下がりすぎた血圧を正常に戻そうと、心臓が過剰に働き、激しい動悸や頻脈、胸の痛みを引き起こすこともあります。これは、心臓に大きな負担をかける非常に危険な状態です。したがって、すでに高血圧の治療を受けている方が、薄毛を改善したいという理由で、自己判断でミノキシジル内服薬を服用することは、絶対にやめてください。もし薄毛治療を検討するならば、必ず、まずは循環器内科などのかかりつけ医に相談し、その上でAGAクリニックの医師にも、高血圧の治療中であることを正直に伝える必要があります。両方の専門医が連携し、あなたの体の安全を最優先に考えた上で、治療方針を決定することが不可欠なのです。
血圧の薬とミノキシジルの危険な関係