薄毛の悩みは、髪の毛そのものの問題以上に、私たちの心に深く根を張ります。他人の視線が気になり、自信を失い、何事にも消極的になる。悩み自体がストレスとなり、さらに抜け毛を増やすという悪循環。私も、かつてはそのスパイラルの真っ只中にいました。そんな私が、半信半疑で始めたのがランニングでした。最初は、ただ薄毛に良いと聞いたから、という不純な動機でした。しかし、走り続けるうちに、私の内面に予想もしなかった変化が訪れたのです。走り始めて間もない頃は、ただただ苦しいだけでした。しかし、週に数回のランニングが習慣になるにつれて、走り終えた後の、えも言われぬ爽快感の虜になっていきました。頭の中を占めていた仕事の悩みや、人間関係のストレスが、汗と共に流れ落ちていくような感覚。これは、運動によって精神安定作用のある「セロトニン」という脳内物質が分泌されるためだと後から知りました。心が軽くなると、世界の見え方が変わってきます。あれほど気にしていた他人の視線が、実は自分が作り出した幻影だったのかもしれない、と思えるようになりました。ランニングは、自分との対話の時間でもあります。自分の呼吸に耳を澄まし、一歩一歩の足の運びを感じる。そうしているうちに、頭の中の雑念が消え、思考がシンプルになっていきます。「薄毛は確かに悩みだ。でも、それが僕の全てじゃない」。そんな風に、問題と自分自身を切り離して、客観的に捉えられるようになったのです。そして、目標だった10キロを初めて走り切った日、タイムや順位とは関係なく、純粋な達成感が全身を駆け巡りました。「やればできるじゃないか」。その小さな成功体験が、髪の悩みで削られていた自己肯定感を、少しずつ回復させてくれました。もちろん、今も鏡を見ればため息をつく日はあります。でも、以前のように絶望することはありません。ランニングは、私の髪を劇的に増やしてはくれなかったかもしれません。しかし、それ以上に大切な「悩みに振り回されない心」と「前を向くための自信」を与えてくれたのです。