鈴木さん（45歳・仮名）は、中堅企業の営業部長。毎日のデスクワークと接待続きの生活で、体重は増え、健康診断の結果は年々悪化していました。そして、彼を何よりも悩ませていたのが、進行する薄毛でした。朝、枕に付く抜け毛の量にため息をつき、会議で頭を下げるたびに、部下の視線が自分の頭頂部に突き刺さるような気がしていました。「年のせいだ」と自分に言い聞かせながらも、自信は失われる一方でした。そんなある日、妻から「人間ドックに行ってみたら？」と強く勧められ、渋々受診することに。結果は、肥満、高血圧、脂質異常症という「生活習慣病のフルコース」。医師から「このままでは危険です。まず、運動を始めてください」と最後通告を受けました。その言葉に、鈴木さんはようやく重い腰を上げ、手始めに近所を走ることから始めました。最初は500メートル走るだけで息が切れ、三日坊主になりかけましたが、「ここで変わらなければ」という危機感が彼を支えました。週に3回、仕事が終わった後に走ることを習慣に。すると、1ヶ月もすると、体が軽くなり、朝の目覚めが良くなっていることに気づきました。2ヶ月、3ヶ月と続けるうちに、スーツのウエストが緩くなり、血圧も安定してきました。何よりの変化は、精神的なものでした。走ることで仕事のストレスが発散され、物事をポジティブに考えられるようになったのです。そして、ランニングを始めて半年が過ぎた頃、長年通っている理容室で、店主から「鈴木さん、最近なんだか髪にコシが出てきましたね」と言われました。驚いて鏡をよく見ると、確かに以前より髪がしっかりとして、地肌の透け感が減っているように見えます。もちろん、ランニングだけで薄毛が劇的に治ったわけではありません。運動をきっかけに、深酒をやめ、野菜中心の食事を心がけ、睡眠時間を確保するようになった。その生活全体の改善が、彼の体と髪を内側から変えていったのです。鈴木さんにとって、ランニングは単なる運動ではなく、失いかけていた健康と自信を取り戻し、人生を再スタートさせるための、起爆剤となったのでした。