皮膚科医としてAGA治療に携わっていると、患者さんからミノキシジルの副作用、特に「多毛症」に関する不安の声をよく耳にします。髪は増やしたい、でも体毛が濃くなるのは困る。そのお気持ちは、痛いほどよく分かります。カウンセリングの際、私はこの多毛症について、単なる「副作用」としてではなく、「効果が出ている客観的なサイン」という側面からもお話しするようにしています。ミノキシジル内服薬を服用して多毛症が現れたということは、服用した薬剤が血中にしっかりと吸収され、全身の毛根に作用している、何よりの証拠だからです。つまり、頭皮の毛根にも、同様に作用している可能性が非常に高いと言えます。実際に、多毛症が比較的早期に現れた患者さんほど、その後の頭髪の改善効果も良好であるという傾向は、臨床の現場でしばしば経験することです。もちろん、だからといって多毛症を我慢すべきだ、と言うつもりはありません。治療のゴールは、患者さんご本人が満足し、QOL(生活の質)が向上することです。髪が生えても、体毛の悩みで日々の生活が憂鬱になってしまっては本末転倒です。そこで重要になるのが、治療開始前の「ゴール設定」です。どの程度の薄毛改善を目指し、どの程度の多毛症なら許容できるのか。この価値観は、人それぞれ全く異なります。私たちは、患者さんと対話を重ね、その方にとっての最適なバランス点を探っていきます。具体的な対策としては、まず「低用量から始める」ことが基本です。いきなり高用量のミノキシジルを服用するのではなく、少ない量からスタートし、頭髪への効果と、多毛症などの副作用のバランスを見ながら、慎重に用量を調整していきます。また、多毛症がどうしても気になる場合は、レーザー脱毛などの対症療法を併用することも有効な選択肢です。ミノキシジルの多毛症は、決して無視して良い副作用ではありません。しかし、その性質を正しく理解し、専門医と二人三脚で上手にコントロールしていくことで、リスクを最小限に抑えながら、治療の恩恵を最大限に享受することは十分に可能なのです。
多毛症は効果の証?医師が語る副作用との向き合い方